仲間を作って人に影響を与える方法

Dale Carnegie著「How to Win Friends and Influence People」を日本語に訳しています。

本書を最大限に生かすための9つの提案

1. 本書を最大限に生かそうと思ったら、絶対に外せない必須条件が1つあります。これはどんなルールやテクニックよりもはるかに重要なことです。この基本的な条件を守らなければ、勉強方法が千あったって少ししか役立たなくなります。本当にこの基本的な行動を守れば、本書を最大限に生かすほかの提案を読まなくても、奇蹟を手にすることができます。

その魔法の提案とはなんでしょうか。学ぶことへの深く猛烈に願うことです。人付き合いの技術を伸ばそうという固い決断です。

どうすればそんな気持ちを高められるでしょうか。常に本書で紹介する原則がとても大事だということを思い出すことです。本書をマスターすれば、豊かで満ち足りた、幸福で充実した人生を送る助けになると心に思い描いてください。何度も自分に言い聞かせるのです。「わたしの人気、幸福、そして価値観は、少なからずわたしの人付き合いの技術次第である」と。

2. 各章は最初にざっと読んで鳥瞰してください。次の章に急ぐことに誘惑されてしまうでしょうが、楽しみのために読んでいるのでもないなら、次の章に行くのは待ってください。人間関係のスキルを高めるために読んでいるのなら、各章を戻ってもう一度じっくり読んでください。長い目で見れば、時間を節約して結果が出すことになります。

3. 頻繁に立ち止まって読んでいる内容について熟考してください。提案の1つ1つについて、いつどのように生かすか、自分に問いただしてください。

4. クレヨン、鉛筆、ペン、マーカーや蛍光ペンなどを手にして読んでください。これは使えると思った提案に出会ったら、その横に印をしておきます。四つ星級の提案だったら全文に下線を引くか、"****"といった印をつけてください。本に印をしたり下線を引いたりすると、より興味がわくし、ざっと見直すのがずいぶん楽になります。

5. ある知り合いの女性が15年ほど大きな保険会社の事業所長をやっていました。毎月、その女性はその月に自社が発行したすべての保険契約書に目を通していました。そう、彼女は大量の全く同じ契約書を毎月毎月読んでいたのです。なぜかというと、経験上、繰り返し読むことだけが、約定をはっきりと心に留めておける唯一の方法だったからです。わたしはかつてほぼ2年かけてスピーチについての本を書きましたが、自分の本で何を書いたのか思い出すために、時折読み直しているほどです。人がものを忘れる時のスピードといったら驚くばかりです。

なので、本当の、長続きする利益を本書から引き出そうと思ったら、一度ざっと読むだけで十分だと思わないことです。一通り読んだら、毎月2~3時間は復習する必要があります。毎日机上の目のつくところに置くこと。しょっちゅう目に留めること。まだ沖合に沈んでいるであろう、これから上昇する豊かな可能性に、思いをはせ続けること。本書の内容を習慣的に有用なものにするためには、絶え間なく、精力的に復習し、活用し続けるしかないのです。ほかに方法はないのです。

6. バーナード・ショーはかつて言いました。「人に教えようとすると、決して習得はしない」と。これはその通りです。習得というのは活動的な作業です。僕たちはみな、行動により習得するのです。だから本書で学習した内容を絶対にマスターしたいと思ったら、何か行動を起こすことです。あらゆる機会で本書の内容を活用すること。そうしないとすぐに忘れてしまうでしょう。使った知識だけが、心に焼き付くのです。

本書の内容を常に活用しようとすると、おそらくは難しいことがわかるでしょう。僕がこの本を書いたのだから保障します。僕自身も自分が提案したことなのに、全部を活用しようとすると難しいことがしょっちゅうです。いくつか例示しましょう。他人の立場を理解しようという気持ちになっている時よりも、イライラしているときのほうが人をとがめたり非難したりしてしまいがちです。人を褒めるよりも、欠点を見つけるほうが簡単なことも多いです。他人が何を望んでいるかを語るよりも、自分が何を望んでいるかを語るほうが自然です。ですから、本書を読む時は、ただ内容を情報として得るのではないと、心に留めてください。皆さんは新しい習慣を身につけようとしているのです。そう、皆さんは新たな人生を獲得しようとしているのです。そうすることで、時間と忍耐を得て、日常的に生かせるようになるのです。

ですから、このページは時々読み返してください。本書を人間関係における実用の手引書として座右に置き、何か具体的な問題 ―たとえば子供の扱い、価値観の合う伴侶を得たい、イライラしているお客様を満足させたい、など―に直面したら、自然のなりゆきに任せた行動や、衝動的な行動をしないことです。本書を開き、下線を引いた個所を復習してください。そして本書にある新しいやりかたを試し、魔法のような効果が上がることを確かめてください。

7. 自分のパートナーや子供、または仕事仲間に、自分が本書の原則に違反しているのを見つけたら、罰金を払うと宣言しましょう。本書を身につけることを、楽しいゲームに変えてしまいましょう。

8. アメリカの金融界では有力なある銀行の頭取が、僕の授業の前のちょっとした雑談の時に、彼の使った非常に効率の良い自己改善法について話してくれたことがあります。この人は正規の教育はほとんど受けなかったのですが、アメリカで最も重要な銀行家の一人になった人です。そして、こうして成功したのはほとんど、自分お手製の方法を常にやっていたおかげなんだと打ち明けたのです。この人がやったのは以下のことです。覚えているかぎり正確に、彼自身の言葉を書きます。

「何年も、わたしは手帳にその日のアポイント全てを記録していました。家族はわたしのために、土曜の夜には決して予定を入れませんでした。毎土曜の夜に、わたしが自省、復習、評価に専念することを知っていたからです。夕食後、わたしは一人になって手帳を開き、その週に行った全ての面談、協議、そして会議を思い返します。そして「あのときどんなミスを犯したか」「正しかった行動は何か、そのうえでどんな方法を取ればパフォーマンスが上がっただろうか」「あの経験の教訓は何だっただろう」と自問します。

こうして行うその週の振り返りは、たびたびいやな気分になりました。自分のへまにしょっちゅう驚きました。もちろん何年か経つと、そんなへまは減っていきました。時にはある程度の期間が過ぎてから、自分を褒める傾向すらありました。この自己分析、自己学習の方法は、何年も続けたのですが、今までに試したことのあるどんなことよりも、効果がありました。

この方法で決断力がつきました。それに、人との交流にずいぶんと役立ちました。非常にお勧めです。」

本書で扱う原則が活用できたかどうかのチェックに、これと似た方法を用いるのはどうでしょうか。そうすれば、以下の2つのことが結果として起こります。

1つ目として、面白くて貴重な学習をしていることがわかり、
2つ目として、人への対応や付き合いの能力が非常に上がることがわかるのです。

9. 本書の後ろには空白ページがあるのはお気づきですか。ここに本書の内容で活用したことを記録することをお勧めします。具体的に書きましょう。タイトル、日付、結果を書きます。このような記録を続けると、とてもやる気が出るし、それに、数年後のある夜、偶然その記録を見つけたら、どんなに素敵なことでしょうか。


本書を最大限に生かすための9つの提案

a. 人付き合いの方法を身につけると深く猛烈に切望すること。

b. 次の章に行く前に、その章を2度読むこと。

c. 読んでいる時は、ひんぱんに立ち止まり、内容をどう生かすか自分に問うこと。

d. 重要な考えに全部下線を引くこと。

e. 毎月本書を復習すること。

f . あらゆる機会に本書の内容を生かすこと。本書を日々の問題を解決する実用の手引書として活用すること。

g. 仲間に、自分が本書の原則に違反しているのを見つけたら罰金を払うと宣言して、訓練を楽しいゲームすること。

h. 毎週進歩をチェックすること。どんなミスをしたか、どんな発展があったか、どんな教訓があったかを、未来のために自問すること。

i. 本書の後ろに、本書の内容をいつどのように活用したかがわかるメモをつけること。