仲間を作って人に影響を与える方法

Dale Carnegie著「How to Win Friends and Influence People」を日本語に訳しています。

改訂版序文

「仲間を作って人に影響を与える方法」は、1937年にたった5,000部で初版されました。デール・カーネギーも出版元であるサイモン&シュスター社も、この部数以上に売れるとは思わなかったのです。本人たちも驚いたことに、この本は一夜にして有名になり、たくさんの人の要望に応えるために版を重ねてきました。今や「仲間を作って人に影響を与える方法」は、出版の歴史の中でも、常時国際的なベストセラーであるという地位を確立しました。この本が、世界恐慌後の一時的な流行にとどまらずに人々の琴線に触れ、人間的要求を満たしたことは、半世紀近く後の80年代に至るまで途切れることなく読まれ続けていることでも明らかです。

デール・カーネギーは、適切な言葉で表現するよりも、百万ドル稼ぐほうが簡単だとよく言っていました。「仲間を作って人に影響を与える方法」は、まさにその適切な言葉となり、引用され、言い換えられ、パロディーにされ、風刺漫画から小説に至るまで数えきれないほどの文脈で使われました。本そのものも、書くことのできるほとんどあらゆる言語に翻訳されました。それぞれの時代で再発見され、その時代での意義を見出されてきました。

そうすると、こんな疑問が必然的にわいてきます。なぜ、活き活きとして世界的な魅力を示した、そして示し続けている本を改訂するのか。なぜ良いものにみだりに手を加えるのか。

この疑問にお答えするために、デール・カーネギー自身が一生をかけて絶え間なくこの本を改訂していたことを知っていただく必要があります。「仲間を作って人に影響を与える方法」は、筆者の「効果的な会話と人間関係論」という講座のテキストとして執筆され、こんにちでもこの講座で使用されています。筆者は1955年に没するまで、増え続ける受講者層のニーズに対応するべく、講座自体も改善、改訂し続けました。デール・カーネギーほど現代生活の動向の変化に敏感な人はいないのです。カーネギーは常に教え方を改善し、磨きをかけました。「効果的な会話」講座で自身の本を何度も改訂したのです。著者がより長生きしていれば、自身の手によって「仲間を作って人に影響を与える方法」を改訂し、1930年代以降に世界で起こったことによる変化を反映させたことでしょう。

この本の中で著名とされる人々の名前の多くは、本書の初版の頃には有名でも、こんにちの読者にはもはや知られていません。いくらかの用例や成句は、わたしたちの社会風土からすると、ビクトリア朝文学のように古臭いものです。この本からの重要なメッセージや全体的な影響が、このような評価に弱められてしまいます。

ですので、こうして改訂版を出す目的は、現代の読書に耐えるよう、本書を明確にし、増補することです。本書の内容に手を加えることはありません。本書には数か所の削除と数か所の現代的な例示を加えたのみで、"変更"してはいません。強気で快活な、カーネギーらしはそのままです。30年代のスラングでさえ残っています。デール・カーネギーは話すように書きました。精力的で熱狂的な、口語体の、くだけた作風です。

著者は著書、著作物の文章で、今でもまだ力強く語ります。世界中の何千もの人々が、毎年開催数が増えいているカーネギーコースの養成を受けています。そしてさらに何千もの人々が、「仲間を作って人に影響を与える方法」を読んで勉強し、より良い生活ために本書の原理を生かすきっかけにしています。読者の皆さんに、この改訂版を、精巧に作られた道具を磨き上げる姿勢で捧げます。

ドロシー・カーネギーデール・カーネギー夫人)